1. 慢性上咽頭炎とBスポット療法(EAT)とは?
のどの奥、鼻の突き当たりにある「上咽頭(じょういんとう)」という部分は、空気の通り道であり、ウイルスや細菌が侵入しやすい場所です。ここに慢性的(長期間)な炎症が起きてしまう状態を「慢性上咽頭炎」と呼びます。
この慢性上咽頭炎に対して、高い治療効果が認められているのが上咽頭擦過療法(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)、通称「Bスポット療法」です。当院では、炎症を起こしている粘膜に「塩化亜鉛液」というお薬を直接塗り、擦過(こする)する治療を行っています。

2. Bスポット療法(EAT)の治療アプローチ
治療は、患者さんの症状や炎症の場所に合わせて「鼻から」または「口から」アプローチします。
週に1~2回、合計10~15回程度を目安に治療を受けて頂くのが理想的です。10-15回程度施行して状態が改善された場合、無症状であれば終了となり、状態維持のため数週間に1回程度継続治療を行う場合もあります。
3. なぜ「痛い・血が出る」の? 治療効果のサインです
初めて治療を受ける方は、「痛そう」「血が出ると聞いて不安」と思われるかもしれません。
しかし、この「痛み」や「出血」こそが、上咽頭が慢性的に腫れて傷ついている(炎症がある)という何よりの証拠です。
健康な上咽頭の粘膜はうっすらとピンク色をしていますが、慢性上咽頭炎の患者さんの粘膜は赤く腫れ上がり、うっすらと充血して血管が浮き出ていたり、ドロッとした粘液(後鼻漏)が付着したりしています。
そのような炎症を起こして過敏になっている粘膜をお薬で擦るため、最初は痛みを感じたり、綿棒に血がついたりします。しかし、治療を重ねて炎症が治まっていくにつれて、内視鏡で見ても粘膜の赤みや腫れが引き、治療時の痛みや出血も減っていきます。
4. のどの症状だけじゃない? 全身の不調とのつながり
「たかがのどの炎症」と思われるかもしれませんが、上咽頭の慢性炎症は、のどや鼻の症状だけでなく、自律神経の乱れや全身の病気を引き起こす引き金になることが分かっています。
上咽頭は、免疫の要である「リンパ球」が非常に豊富で、同時に「自律神経」の繊維も体表近くに集まっている特殊な場所です。そのため、ここが炎症を起こし続けると、以下の2つのルートで全身に悪影響を及ぼします。
1.自律神経の乱れ(神経ルート):
上咽頭の刺激が脳や自律神経を狂わせ、激しい倦怠感、頭痛、めまい、睡眠障害、うつ症状などを引き起こします。
2.免疫の暴走(免疫ルート):
上咽頭で興奮した免疫細胞や炎症物質が血液に乗って全身を巡り、腎臓の病気(IgA腎症)や皮膚の病気(掌蹠膿疱症)、関節の痛みを引き起こす「病巣炎症(びょうそうえんしょう)」の原因となります。


<参考文献:日耳鼻128: 205―214,2025>
💡 近年、特に注目されている「コロナ後遺症」への効果
最近では、新型コロナウイルスに感染した後に続く「激しいだるさ(倦怠感)」「ブレインフォグ(頭がボーッとする、集中できない)」「長引く咳や頭痛」といった後遺症の多くに、この慢性上咽頭炎が深く関わっていることが判明しています。これらに対してBスポット療法(EAT)を行うことで、症状が大きく改善したという優れた研究成果が多数報告されており、当院でも積極的に治療に取り組んでいます。
5. このような症状でお悩みの方はご相談ください
慢性上咽頭炎は、通常の風邪薬や抗生物質だけでは根本的に治りにくい特徴があります。長引くつらい症状を「体質のせい」と諦めず、ぜひ一度当院へご相談ください。